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> story

パワー 

ねえねえお母さん
ひしゃく星のお話って知ってる?

「知ってるわよ。学校で習ったの?」

うん。優しい女の子が、お母さんのために水をさがしにいって
やっと一杯のひしゃくの水をゲットしたのね。
お母さんのところに持っていく間に
水をください、って言う人たちに会って
可哀想だから、分けてあげるの。

「そうね。優しい女の子は断れないのよね。
本当はお母さんに全部飲ませてあげたいけど」

そうなの。それで、お母さんのところに持っていけたのは
ひしゃくのほんの少し残った水で
それでもお母さんはね

「うん」

ありがとうって、女の子にも飲みなさいって言うの。
女の子もすごくのどが渇いてたからね。
でも、女の子は我慢してお母さんに
残りの水を全部飲ませるの。
そうするとね

「うん。そうすると?」

ひしゃくから水がどんどん湧いてきて
飲んでも飲んでも涸れないの!
でね
そのひしゃくは金色に光り輝いて
空に上り、星になったんだって。

「なるほど。まあ、星になったのはオマケだけど
その話はうそじゃないかもよ」

え?

「実はそのとき、私が近くにいて
パワーを使ってしまったのよ。」

そうなんだ~~~

娘はキラキラした目をして納得した様子だった。
「お~~い、ビール出してくれ~~」
隣の部屋からダンナが呼んでいる。
「はーい」
両手に一杯瓶ビールを抱えていく。

「今日はどのくらい出す?10本?」

そう。私はインドの山奥で修行して
100万ボトルを放出するワザを会得したのだった。

> story

W 

さんざんもてあそばれて
棄てられた。
最初っから、お金だけが目的の男だったのだ。
「お前みたいな醜い女、誰が好きになるものか」
最後の言葉がこれだった。
鏡なんかもう二度と見たくない。
ぼろぼろ泣きながらひとりで酒を飲んでると
「どうしたの?」
ハンカチを差し出してくれた人がいた。
それが私と彼女の出会い。

「そんなヤツ、見返してやりましょうよ」
私の話を聞いて彼女が言った。
「・・どうやって?」
「整形してみない?美しく変身するの」
「え」
「私、実は美容外科の医者なのよ。もしよかったら」
彼女はにっこりと微笑んで名刺を置いた。
「あなたがその気になったなら、格安で手術させてもらうわ」
「・・・」
「連絡、待ってるわね」

綺麗になって見返してやる
それから数日はその言葉が頭のなかをグルグルと回っていて
1週間後には、名刺に書かれてある病院に電話をしていた。

彼女の手術は完璧だった。
美しく生まれ変わった私は
素性を伏せたまま
私を棄てた男に近づいていき
そして
何も知らない男は
私との結婚を決めた。

「おめでとう」
「ああ。君か」
「あのときの賭け以来ね」
「そうだな。あのときは勝たせてもらったよ」
「意外にあっさりとあなたに心を奪われてしまったものね」
「簡単さ。普段男に優しくされたことないからな。醜い女は」
「醜いって・・・まだ外見にこだわるの」
「悪いか?」
「まあ、いいわ。あのときの賭け金100万円はあなたのものよ」
「当たり前だろう」
「でもね」
「ん?」
「結局はあなたの負け」
「?どうしてだい」
「あなたは私が選んだあの女性と結婚することになったじゃない」
「???」
「忘れたの?あの女性の心を奪えたらあなたの勝ち、
でも彼女と結婚すればあなたの負け、って賭け」
「・・・・まさか」

そのまさかよ。
あなたはあの女性と結婚したの。

> story

エル 

私の名前はエル。
何を隠そう祖先は有名なコンピューターだった。
はるか宇宙の果てまで旅に出かけ
そこで故障してしまったと
母親世代から伝え聞いている。

「おまえには、その有名な祖先のパーツが一部使われているのよ」
それが名誉なことなのか
不名誉なことなのか
私にはわからない。
母親世代は少し複雑な反応を示しながら
とにかくがんばれ、と記憶を残した。

私のパートナーたちは
祖先の話を聞くと
一様に驚き
少し腰を引く。
歓迎されていないのは
私にもわかった。
ときおり少しの誤動作があるものなら
「まあ、祖先が祖先だから」と
軽く諦められてしまう。
それでも、簡単な作業なら
ソツなくこなすことはできた。

今回の私のパートナーは
そんな私の能力が正確にはどうなのかを
とことん調べてみようじゃないか
という、頼もしい博士だった。
「ロボットだもの。人間にはない能力があるんだから」
嬉しくて少し回路が震えた。
博士は指令をホワイトボードに書く。
私はその指令を読みとった通りに
正確にこなせばよかった。
最初の指令を読み取って
私の回路はさらにさらに振動した。
ホワイトボードにはこう書かれていた。

【l 00 km 走れ】

いつものように冷静に
「わかりました」 と返事して
そして
私は走り出したのだ。

もうどこまで
どのくらいまで
距離も時間もはかれないほど
私は走っている。
燃料は太陽電池だから
切れることはない。
たぶん、ボロボロになるまで
いや、なってもまだ
走れるパーツが残っていれば
最後まで走るだろう。
私を止める事はできない。
だって博士が命令したのだもの。


「エル、無限大km 走れ」

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奇跡 

私の父はどうやら何人もいるらしい。
彼らは 時折、ふっと現れてふっと消えていく。
母と楽し気に会話してキスして去っていく。
若い男もいれば中年の男もいる。
私を抱き上げて頬擦りすることもあれば
悲しそうにただじっと見つめているときもある。
母の好みなのか、年齢はそれぞれ違っていても
背格好や顔かたちはなんとなく皆似たような感じだ。
そして母と私を呼ぶ声はいつも同じだった。

母は変わっている、と祖母が嘆いていた。
どう変わっているかは私が一番良く知っている。
本当の父の顔を知らない幼い頃から
母はいつも私に父のことを話してくれていた。
「あなたのお父さんはね
時間を移動できる人なのよ」

最初は5分ぐらい先に移動しただけだったの。
「もうすぐ郵便配達がきて、
君の友達の引越しのお知らせを渡すよ」
そんなまさか、と思うことが本当におきて
彼はどんどん遠い未来のことを言い当てるようになっていった。
そのうち、私の目の前から消える時間が次第に長くなり
ある日彼は震えながら言ったわ。
「怖いよ。もとの時間に戻れなくなっている」
「自分の思うとおりにはならないってこと?」
「そうだよ。自分の意思ではどうにもならないんだ。
見えないちからに飛ばされる、って感じなんだ。」
「いろんな時代に行ってしまうの?」
コクリとうなずいたそのすぐ後彼は消えて、
次に現れたときはかなり年をとっていたわ。
「君はいつまでも若いね」
私を抱きしめながらそうつぶやいた彼は
たぶん私の最期を見てきたのだと思うの。
生まれたばかりのあなたの先行きも
知っているようだった・・・・・

父のことを病床で繰り返し母は教えてくれたけど
それは病のせいだと私は思っていた。
そして父のことを少し恨んでもいた。
本当は父は私たちを捨てたに違いない。
実の父を知らない私に
母は亡くなる前に
夢物語を聞かせてくれたのだろう、と。


「送っていこうか?」
彼が心配そうに言うのに笑顔でこたえて
私は家路を急いだ。
結婚式の打ち合わせで帰りが遅くなってしまった。
「やっぱり、送ってもらったほうが良かったかしら」
後悔し始めたけど、もう遅い。
薄暗い夜道を歩いていると、
見知らぬ人物が前方に立ちふさがった。
「だ、だれ?」
その人物はコートをはだけ、
私のほうに何かを差し出した。
しわくちゃな指。
老人は一枚の紙を月明かりの下に広げて見せた。
何かの記事。
見慣れた教会の庭の写真。
日付を見て、私は叫んだ。
「お父さん!?」
老人が微笑んだと同時に
まるで何かに吸い込まれるように
彼の姿は消えていた。


「わかってくれたのね」
「うん。間に合った」
「良かった・・・これであの子は助かる」
ベッドに横たわりながら
彼女はやせ細った指で僕の手をとった。
「ほら。見てごらん」
僕は一枚の新聞記事を手渡した。
震える声で見出しを読む彼女。
「・・・大惨事・・・挙式の最中に自家用ヘリ墜落」
美しい教会の庭に不似合いな、粉々になったヘリコプターの残骸の写真。
息をのむ彼女の目の前で、
記事の見出しがゆっくりと変わってゆく。
「奇跡・・・突然のキャンセルで無事・・・」
うん、僕はうなずいた。
伝える事ができた。そして娘は挙式の日程を変更してくれたのだ。
「あなたが奇跡を起こしたのね」
彼女は目を閉じて安心したように微笑んだ。
確かに奇跡だよ、僕は彼女の頬を撫でながらささやいた。

自分の思うとおりの時間にいけるのは
たぶん、これが最初で最後だろうから。


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流れ星 つたえて 

手紙書くわ
彼女の声がまだ耳に残っている。
手紙だなんてまた古風な
彼女らしいじゃないか
僕らをよく知る同僚が笑う。
メールが主流になったのはもう何十年も前だ
文字を正確に美しく書ける人は少なくなった。
彼女の手紙を読んでいると
涼やかな声が心のなかで響いてくる。
僕は彼女の手紙を待った。

何百光年の旅をして
僕達は辺境の星に着いた。
僕は彼女の手紙を待った。
母船が何年かに一度地球を往復してくれる。
そのときに彼女からの手紙を携えてきてくれるはずだった。
だが彼女からの手紙は
いつまでたっても届かなかった。

心変わりは人の常だからね
僕がため息をついていると
同僚が慰めてくれる。
彼女が心変わりをしたなんて
思いたくなかったが
だが
手紙が来ないのは事実だった。

僕は彼女の手紙を待った。
そして月日は瞬く間に流れた。
手紙書くわ
そう言った彼女の声はもうだいぶ記憶から薄れてきてたけれど
それでも
僕は諦め切れなかった。
そしてある日
とうとう、ついに
彼女から手紙がきた。

「愛しいあなた」

書き出しを読んで。僕の手が震える。

「愛しいあなた
あなたが空の遠くにいってしまってから
もう、どれだけの時間がたったかしら。
忘れなさいとみんなが言う。
でも、私は忘れる事はできない。
あなたに会いたいという想いは
毎日毎日強くなるばかりです。」

忘れなさいって?
随分じゃないか
僕は思わず苦笑する。
僕らの気持ちは距離を超えている。
現にこうして、僕は彼女の手紙を読んでいるのだし。

「流れ星を見るたび
あなたを思い出します。
あの日、元気に旅立ったあなたが
もう二度と帰ってこないなんて
信じられない。
あの流れ星はあなたの命をのせて
どこかへ流れていくのかもしれないわね。」

・・・・
え?
僕は顔をあげて周囲を見回す。
さっき、手紙を渡してくれた同僚の姿は
どこにも見えなかった。
静かな宇宙ステーション
太陽電池で永久に回転し続ける。
僕は音の無い世界に立っていた。
ひとりで。
そして 鮮やかに記憶が蘇ってくる。


警告音のなか
船長の怒号が響く
絶望的な叫び
回避できません!
それが僕の最期の言葉だった。

流星群にぶつかって
僕らの船は沈んだ。
僕は
宇宙の闇のなかを漂う塵のひとつになった。

「愛しいあなた」

彼女の手紙の美しい文字が乱れる。

「もうすぐ
あなたのそばにいくわ。
毎日、ベッドで横になったまま空を見ています。
でも心配しないで。
苦しくはないから。
もう随分長い間
このときを待っていました。
あなたは私がわかるかしら。」


僕はずっと彼女の手紙を待っていた。
だが本当にこの手紙が読まれるのを待っていたのは
彼女だった。
ずっと長い間
彼女は待っていてくれたのだ。

「    」

僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
何度も何度も。
愛しいあなた、、、
きみの手紙が宇宙でさまよっている僕の
散り散りになった魂をよびあつめている。
磁石に吸い寄せられるように
幾筋もの流れ星が集まって
僕の心はひとつになってゆく。

愛しいきみ

僕は手紙を抱きしめる。
そして きみを 抱きしめる。
ようやく。
きみの笑顔を 抱きしめる。

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