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呑まれる 

目覚まし時計のけたたましいベルの音に
片手を思い切り伸ばして
僕はスイッチを切る。
カーテンの隙間から朝陽が細い線のように忍び込んできて
ベッドの端を切り取っている。

「あなたは、今、どこにいますか?」

ぼんやりとした頭の中に、この言葉が浮かんできた。

「どこって、、家だけど」
「ふーん」
「どこだと思った?」
「べつに・・・。普通の答えでがっかり」
「そりゃ、、悪かったね」

いつものチャット部屋で初めて会話した人に
こんなこと言われて、カチンとこない奴は
よっぽど人生経験積んだ大人だね。
いや、すでに枯れちゃってるかもしれない。

「そういうきみは、どこにいるの?」
「んー・・・。」
「自宅?ネカフェ?会社?」
「ブー。はずれ」
「じゃ、どこ?」
「んー・・・。」
「なんだよ、秘密かよ」
「秘密じゃないよ。ほかに思いつかない?」
「ほかに?」

自宅、ネカフェ、会社、・・このほかにPCのあるところって、どこだ?
「学校とか、図書館とか、自由に使えそうなとこって、そうは無いだろ?」
「たしかにね。」
「あ、わかった。ノート?」
「ああ、それなら、どこでもできるね」
「なんだよ、他人事みたいに」
「だって、他人事だもの。」

僕は画面をじっと見つめる。
こいつは、何が言いたいんだろう。

「どこにいるのか、なんてそれほど重要な質問じゃないと思ってる?」
指が激しくキーを打ち始める。
「うむ。そう思ってたよ。僕は、今、うちにいて、、、、」
「そうだね。そして、こうして会話している」
「うん。言葉を交わしている」
「だれと?」
「だれって、、きみと。 PCの向こうにいるはずのきみとさ」
「向こうね」
「うん。僕から見て、向こう側、、、、」
「あなたから、見て・・ね」

【あなたは、今、どこにいますか?】
・・・僕は深く考えていなかったけれど
これって、見えないネットでつながってる者同士じゃ
けっこう重大なコトなのかもしれないな。

「べつに、、詳しく知りたいとは思わないよ。きみのこと」
「ああ。お互いに、知らなくてもいいことってあるしね」
「そうだね。知らないほうがいいことだって、、、、、」
「あるしね」
「きみがどこにいるのか、、、」
「どうでもいいことだよね」

言葉が重なってゆく。
僕の言葉を待ち構えているように即座にこたえる相手。
ディスプレイに連なる言葉たちは
確かにこの指が弾き出したものだった。




ベッドからもさもさと這い出して
付けっ放しのPCの前に立つ。

「あなたは、今、どこにいますか?」

トップにゆれる文字。
会話がまた
始まろうとしている。
僕は、ここにいる。
ほかのどこにもいない。
僕は僕だけのはずだ。

「どこって、今起きたばかり」
「おはよう。今日も始まったね」



いつものように
饒舌な指が向こうにいるはずの相手の言葉を
吐き出している。

繰り返し

くりかえし。

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