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過去との決別 


お題は、「3日間並んでゲットした福袋に入っていた驚くべき目玉商品とは?!」





その福袋を買うために3日間並ぶ。
なぜ、3日間なのか。

1日目
静かに人が集まり始めた。
店の前で整理券を受け取る。
3日前に並んだという証明書だ。
これが無いと、福袋を買う権利はない。
証明書には、3つの欄が印刷されている。
その初日の欄に、店のスタンプが押されている。
これから3日間、店のスタンプが証明書に押されていく。
3つの欄すべてにスタンプがあれば、3日間並んだという証だ。
何時に店員がスタンプを押しに来るのか、それは秘密のままだった。
並ぶ者は気の抜けないまま、長時間列を離れることもできずにそこに佇む。

2日目
ろくに眠りもしないで夜を明かす。
ある者は空を仰ぎ、ある者は足元を見つめ、ある者は目を開こうとしない。
皆、一つのコトを思いつめている。
その日が来るまで、同じ事を考え、思い出し、自分に問いかける。
いいのか?ここに並んでいていいのか?
拘束されるのは、結論を出すまでに悩みぬけということなのだろうか。
その福袋を買うために、3日間並び、3日間悩む。
それが果たして長い時間なのか、短い時間なのか、誰にもわからない。
眠れないのか、あちらこちらでガサゴソ音がする。
携帯電話でヒソヒソと話していた男が、ゆっくりと、列から離れていった。

3日目
あれほどに長かった人の列が、いつの間にか人数をすぐに数えられるほど短くなっていた。
皆、青白く疲れきった表情なのは、長時間並び続けたという理由だけではない。
最後のスタンプが押され、安堵の吐息と、ますます追い詰められた瞳と。
じっと証明書を見つめたまま、最後の最後まで思い悩む者もいる。
すでに心を決めている者は、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
店のシャッターが、ぎぃぎぃと音をたて、上がり始めた。
誰も何も言わず、静かに引き換えが進んでいく。
3日間並んだ後の数分で、福袋は完売した。

それは、過去と決別できる福袋。
袋の中には 数枚の書類とともに、一枚の往復はがき。

「 このハガキは切り離さずにお出しください
  あなたの氏名・生年月日・現在の住所・電話番号
  記載漏れのないように記入してください 
  すべての手続きが完了した際のご連絡のため
  返信ハガキを新しいご住所に送付させていただきます 」

このハガキを出せば、すべて変わるのだ。
名前も、生年月日も、住所も、学歴も、
すべての記録が別人のものにすりかえられ、
過去の自分とは全く違う人間として、この世に生きることができる。
以前の自分の記録は、永遠に破棄されるのだ。
3日間並びながら、過去と決別できるのかどうか
自分自身が考え、決める。
だが、今こうして福袋を手にしても猶、迷う。

かすかに震える手の中で、たった一枚のハガキが揺れている。
・・・・・? 
下の方に、赤い字で注意書きがされてあるのに、気がついた。

※ 記録の手続き完了の後に
  記憶の消去を開始いたします
  お知り合いの方との接触は  
  お控えになってください   ※


何度も、読み返していた。


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