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恋文 

俺らは毎日走る練習をしていた。
いかに彼女のもとへ早く正確に手紙を届けるか。
それが俺らの使命なんだ。

もっと足を上げて!
目標を見失っちゃだめだ!
賢くコースを選べ!
スピードも大事だが障害を乗り越える力強さも備えろ!
そして最後は気力だ!

時間が経つごとに
俺らの目の色が変わってくる。
うようよしてるこいつらの中で
彼女に手紙を届ける事ができるのは
たったひとりだ。
それは自分だ、呪文のようにつぶやいてイメトレを続ける。

俺らは出発のときがくるまで
丁寧に手紙を書く。
それぞれ少しずつ内容が違っている。
届けることができた手紙だけが
彼女に読まれ
そして彼女の記憶に刻まれる。
記憶のなかで俺らは生き続ける。
永遠の命がそこから始まるんだ。


そして出発は唐突だったりする。
彼女のもとへいけるのか。
ときには間違いだってこともあるぜ
隣で誰かがつぶやいた。
無駄死にだけはしたくない。
飛び出した俺らは正しい出発だったことを一瞬で知る。
よし!
どうぉぉぉぉぉ!!
荒波のように俺らは走る。

しっかり学習してないやつらはコースを間違えてしまう。
馬鹿だな。
だが馬鹿なヤツの手紙は彼女には必要ない。
障害の少ないコースを
俺らは体力の続く限り走る。
長い。
遠い。果てしない。
どこまでも暗闇のなかを
懐で手紙を温めながら
俺らは少しずつ彼女のもとへ近づいてゆく。

「ここだ。」
ようやくたどり着いた地に
彼女はいなかった。
どこを探しても、いない。
もう去ってしまったのか。
それとも、これから来てくれるのか。
俺らはもうずいぶん減ってしまっている。
そして皆今にも息絶えそうに疲労困憊していた。
「待つしかないな・・・・」

俺は自分の書いた手紙を読み返してみる。
君と愛し合えたなら
俺の命を君に託そう。
俺のすべては君への贈り物だ。
A、T、G、C・・・・・

いつまで待つのか。
残り少なくなった俺らが次々に消えてゆく。
最後は気力だ!
練習のときに何度も言われたな。
知力、体力、気力が試されていくわけだ。
だが俺も、もうだめかもしれん・・・・
俺も消えてゆく。
そう思った瞬間、遠くに光が見えた。

光臨、
まさにその言葉どおり
彼女は光とともに降りてきた。
あたたかい。
命が満ち溢れている。
残った俺らは最期のチカラで
彼女の足元ににじり寄る。
彼女の差し出された手に
手紙を渡そうと。

一番早く手元に届いた手紙だけを
微笑みながら受け取って
彼女は俺にキスをする。
その瞬間、俺らはすべて消える。
俺の命だけは
彼女への手紙になって残された。

君と愛し合えたなら
俺の命を君に託そう。
俺のすべては君への贈り物だ。
A、T、G、C・・・・・




「おめでとうございます。妊娠していますよ」

恋文はしっかりと届けられた。っす。

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