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101 

窓を開けると
夜風が吹き込んできた。

神様ありがとう
ボクは天を仰いで満月に感謝した。

ボクには100人の友人がいて
今夜、誕生パーティーを開いてくれた。
100回のおめでとうを聞き
100の握手を交わし
100のキスと抱擁をうけた。

「みんなで相談したんだ。それで、この贈り物に決めた」
彼が静かに言いながら、ボクにこれを
そっと差し出した。
白いリボン。
真っ青な箱。
ありがとう
ボクはひとつの贈り物に
100回、お礼の言葉を言った。

箱を開けてごらん、
天上の月がボクに語りかける。
「開けてもいいの?」
もちろんさ
月は穏やかに微笑む。
ボクはゆっくりと白いリボンを解いた。
リボンは綺麗な螺旋を描いて
風に吹かれ落ちてゆく。
いくつかの 読まれなかった暗号が
リボンからこぼれて夜空にのぼっていった。

青い箱はどこにも切れ目がないようで
ぐるぐると回しながら手がかりを探す。
どうやって開けようかと考えていると

暗証番号は?
月が促す。
そうだ。暗証番号だった。
ボクは小さくガッツポーズ。
箱の隅に、カウンターのようなものを発見した。

何桁もある番号を、ボクはスラスラと打ち込んでゆく。
打ち込みながら、なんでこの番号を知っているんだろう
と、ちょっと不思議に思う。
カチリ、
と小さな音がして
箱が少し震えた。
思わず空を見上げると
月が言った。
「開いたね」
厳かな声だった。

ボクはゆっくりと箱を開く。

そこから光があふれ出して
ボクを包み込んでゆく。


「さあ。目をあけて」
月の声が聞こえる。
だけどそれは天上からじゃない
もっと近く
耳元でささやくように。
まぶしい月光に顔をしかめながら
静かにボクは目を開けた。

いや、月の光じゃない。
ボクは周りを確かめる。
数人の白衣を着た人がボクを見つめている。
そして天井には
丸い、月のような手術灯。


「ようこそ。気分はどうだ?」
顔を覗き込まれた。
ボクはかすれた声で返事する。
「良くも悪くもないよ」
ボクの答えにひとりの医師が笑う。
「まったく。第一声まで皆同じなんだな」

君はクローンだ。
君のオリジナルはもうこの世にはいない。
君たちは生前に登録された細胞からうまれた。
コピーを繰り返すと不具合が起きるから
君たちには、オリジナルの細胞が必ずひとつ
使われているんだよ。


部屋の周囲にボクにそっくりなボクたちが佇んでいた。
100人のボクに囲まれている。
そう、クローンは100体。
ボクは101体目。
静かに起き上がり
音も立てずに歩いて

ボクはボクの体をボクたちのなかに埋める。

やあ、ようこそ
100のささやきのなか
ボクはたぶん100回繰り返された言葉を口にした。

これが
命 というものなのか。

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