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手紙 



ある日、私のもとに届いた手紙。
消印を見て、驚いた。 どこを旅してきたのだろう
ずいぶん前の日付になっている。
差出人は、・・・・名前を見て息をのんだ。
その名前には、見覚えがある。なつかしい名前。
ふっと、頬が緩むのを感じて、私は風を見上げる。

彼とは雑誌の文通欄で知り合ったの。
お互いに学校の毎日を書いたり
住んでる街のことを知らせたり
ときには、あこがれてる先輩の誕生日に何を贈ろうか相談したり
けっこう、文通を続けていたんだよ。
彼に好きな人ができたってことも知っていた。
両思いで初めてのデートしたってことも
すごく幸せそうな手紙がきても
ヤキモチとか、うらやましいとか、そんなことちっとも思っていなかった。
なのに
その日の一通の手紙は違ってた。

「彼女が、泣くのです。」
「自分がいるのに、なぜほかの女性と文通を続けるのか、と責めるのです」
「僕はどうしていいかわからないけど」
「とても自分勝手だと思うけど、あなたとの文通をやめたいと思います」
「これが最後の手紙です。勝手なお願いですが」
「返信はしないでください、ごめんなさい」

それまで、楽しい文通をしていたのに
その手紙のおかげで、今までのことはすべてダイナシ。
返事を出したかって?もちろん、出すわけない。
馬鹿にしてるって、思ったもの。

この遅れてきた手紙は、彼が私に出した本当に「最後」の手紙。
どうやら彼は彼女としっくりいかなくなって
それでも、もう一度私と文通することはできないだろうと
お詫びの丁寧な手紙を出したようなのだ。
だけど、彼のこころは、私には届かなかった。
どこでどう止まっていたのか、どこかでひっそりと思い出は眠っていた。
その眠りを覚ましたのは誰なんだろう?
この手紙が自分から誰かに呼びかけたのだろうか。
私のもとへ、彼の気持ちを伝えなくては
私の彼への誤解を少しでも解かなくては
手紙に託された使命が、ほんの少しの奇跡を起こしたのだろうか。

私は彼の言葉を何度もくり返し読む。
彼の真心が、ゆっくりと伝わってくる。
あのとき、すぐにこの手紙を受け取っていても
彼をゆるす気持ちにはなれなかっただろう。
時間をかけて、私もいろんな気持ちを受け入れられるくらいの大人になった。
この手紙はそれを知っていたのだろうか。

過去からの手紙。
今はやさしい思い出だけを呼び覚ます
それは、私のこころのたどってきた道。


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