> スポンサー広告

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • --.--.-- --:-- 
  • コメント(-) |
  • トラックバック(-) |
  • URL |

> story

流れ星 つたえて 

手紙書くわ
彼女の声がまだ耳に残っている。
手紙だなんてまた古風な
彼女らしいじゃないか
僕らをよく知る同僚が笑う。
メールが主流になったのはもう何十年も前だ
文字を正確に美しく書ける人は少なくなった。
彼女の手紙を読んでいると
涼やかな声が心のなかで響いてくる。
僕は彼女の手紙を待った。

何百光年の旅をして
僕達は辺境の星に着いた。
僕は彼女の手紙を待った。
母船が何年かに一度地球を往復してくれる。
そのときに彼女からの手紙を携えてきてくれるはずだった。
だが彼女からの手紙は
いつまでたっても届かなかった。

心変わりは人の常だからね
僕がため息をついていると
同僚が慰めてくれる。
彼女が心変わりをしたなんて
思いたくなかったが
だが
手紙が来ないのは事実だった。

僕は彼女の手紙を待った。
そして月日は瞬く間に流れた。
手紙書くわ
そう言った彼女の声はもうだいぶ記憶から薄れてきてたけれど
それでも
僕は諦め切れなかった。
そしてある日
とうとう、ついに
彼女から手紙がきた。

「愛しいあなた」

書き出しを読んで。僕の手が震える。

「愛しいあなた
あなたが空の遠くにいってしまってから
もう、どれだけの時間がたったかしら。
忘れなさいとみんなが言う。
でも、私は忘れる事はできない。
あなたに会いたいという想いは
毎日毎日強くなるばかりです。」

忘れなさいって?
随分じゃないか
僕は思わず苦笑する。
僕らの気持ちは距離を超えている。
現にこうして、僕は彼女の手紙を読んでいるのだし。

「流れ星を見るたび
あなたを思い出します。
あの日、元気に旅立ったあなたが
もう二度と帰ってこないなんて
信じられない。
あの流れ星はあなたの命をのせて
どこかへ流れていくのかもしれないわね。」

・・・・
え?
僕は顔をあげて周囲を見回す。
さっき、手紙を渡してくれた同僚の姿は
どこにも見えなかった。
静かな宇宙ステーション
太陽電池で永久に回転し続ける。
僕は音の無い世界に立っていた。
ひとりで。
そして 鮮やかに記憶が蘇ってくる。


警告音のなか
船長の怒号が響く
絶望的な叫び
回避できません!
それが僕の最期の言葉だった。

流星群にぶつかって
僕らの船は沈んだ。
僕は
宇宙の闇のなかを漂う塵のひとつになった。

「愛しいあなた」

彼女の手紙の美しい文字が乱れる。

「もうすぐ
あなたのそばにいくわ。
毎日、ベッドで横になったまま空を見ています。
でも心配しないで。
苦しくはないから。
もう随分長い間
このときを待っていました。
あなたは私がわかるかしら。」


僕はずっと彼女の手紙を待っていた。
だが本当にこの手紙が読まれるのを待っていたのは
彼女だった。
ずっと長い間
彼女は待っていてくれたのだ。

「    」

僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
何度も何度も。
愛しいあなた、、、
きみの手紙が宇宙でさまよっている僕の
散り散りになった魂をよびあつめている。
磁石に吸い寄せられるように
幾筋もの流れ星が集まって
僕の心はひとつになってゆく。

愛しいきみ

僕は手紙を抱きしめる。
そして きみを 抱きしめる。
ようやく。
きみの笑顔を 抱きしめる。

comment

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。