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美ら海 

危ないなあ。
誰だよ、こんなところに穴掘ったの
足首を捻挫するところだった。
ちょうど大人がキツキツではまるぐらいの大きさ
覗いてみると、意外に深い。
子供だったら、底まで落ちちまうぞ
そう思ってると、たぶんこの近所の学校の保護者達だろう、
警察官と一緒にやってきた。
「危ないですよね。ここら辺いっぱいに穴が掘られてるんですよ!」
不快感めいっぱいにしておばちゃんが怒鳴る。
「結構深いしね。子供には気をつけるように言ってください」
警察官はメモをとりながら穴を覗き込んでいた。

ここら辺いっぱい、だった穴は
次の日には、辺り中いっぱいに掘られていた。
そしてどうやら穴はこの町内だけじゃなく
市内、いや県内、いやいや日本国中、
どっこい世界中、ありとあらゆるところに掘られているのだった。
「ただいま世界中に掘られている穴は、
把握されているだけで50億個。
現在も増え続けていますっ」
ニュースでは悲鳴に近い声でレポーターが叫んでいる。

「50億かあ。ひとり1個って感じじゃん?」
俺の隣で彼女があくびをしながら言った。
ひとり1個の穴?
「だとすると70億個近くまでいくのかなあ」
「じゃないの」
どうでもいいよ、と彼女は目を閉じた。
穴が増え続けてるのにどうでもいいことないだろ、
と言いたかったのに
俺もなぜか無性に眠くなってきていた。
このまま地球はどうなっちまうんだ?
不安なまま、だがどこか「どうでもいい」感じで
俺達は眠ってしまった。
そしておそらく、世界中の人々が眠っていた。
それまで嵐のように動いていた俺達の時間は
音もなく突然にそこで止まってしまった。


「こうして、この星の知的生命体は一斉捕獲されたのです」
青く澄んだそらに浮かぶガラスの宇宙船。
「人類が捕獲されて以来、地球の自然を破壊するものはなくなり
地球は急速に、美しさを取り戻しています。」
ガイドの声が響く。
さあ、そろそろ時間です
太陽の光と風をうけに、人類が穴から顔を出しますよ

俺達はもう何も考えない。
太陽の光を浴びるために
キツキツの穴からもそもそと上半身を出す。
俺の隣の穴には彼女が棲んでいる。はずだ。
そうして大地に人間の数だけ掘られた穴から
それぞれが顔を出して太陽の光を浴びる。
風の匂いを嗅ぐ。

そらにはゆっくりと雲のように
観察船がいくつもいくつも流れていった。

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