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太陽は今日も 

今日も太陽が熱い。
ぐらぐらと煮えそうな頭を振って
僕は電車を待っていた。
この暑さだっていうのに
ずいぶん体をピッタリさせてくるオヤジがいる
少し体を離して立つ。
ハンカチを出し、首筋をつたう汗を拭った。

「太陽フレアってご存知ですか?」
え?
「太陽フレアですよ」
さっきすぐ横にいた男が
こちらを横目で見ながら話しかけている。
「いいえ」
関わりたくないので小さな声で答えた。
なんなんだ?このオヤジ
妙にゆっくりと話し続ける。
「太陽の爆発のことです」

「太陽はエネルギー体ですからね
爆発は良く起こすんですが
ときどき大きな爆発を起こす。
それが太陽フレアです」
男の後ろに立っている女が
僕のほうを心配そうに見た。
この人少し変?その眼がそう言っている。
そして僕の後ろに静かに移動した。

「太陽フレアが起きると
放射線や電磁波が地球に降り注ぐのですが
それは大丈夫」
だが、と男は空を見上げて話し続けた。
「だが、人工衛星はそうはいかない
太陽フレアの影響をもろに受けてしまう」

すっと指さすその先を
思わず見上げると
流れ星が落ちてゆく。
「あ」
後ろで女が声をあげた。
「星じゃない。人工衛星ですよ」
男は今度は僕をじっと直視した。
「こんなもんじゃない。大規模な太陽フレアが起きたら
地球を回っている人工衛星はすべて落ちてくるのだ
この地球上に。
幾千もの人工衛星がね」


それが僕と何か関係あるのか?
僕の視線に気づいてるのかいないのか
男は僕を見つめたまま
懐に手を差し入れる。
「将来あなたの子孫が」

まもなく電車がまいります
ホームにアナウンスが響いて
男の話が一瞬途絶えた。
だけど僕は聞いた。
「将来あなたの子孫が
太陽フレアに影響されない
人工衛星を作るのです」


次の瞬間、電車が滑り込んできて
男は懐から出した小刀で
僕の後ろの女を刺した。
一瞬のできごとだった。
「あぶない!」
僕の腕を誰かがつかみ
電車に倒れこみそうになった体が
寸でのところで引き止められる。

「大丈夫ですか?」
いつの間にか数人に囲まれている。
「あの女だよ」
「どこか逃げちまったね」
「なんてことするんだろう」
女?
僕の後ろにいた人なら隣の男に刺されて・・・
そう言おうとして
彼女がいないのに気がついた。
「女の人は・・?」
「ひどい女だよね」
「あなたを線路に落として殺そうとしたんだよ」
「背中を押すの見た!」

僕の後ろに立った女は
電車がホームに入る直前に
僕の背中を押したらしい。
その女も隣にいた男も
その直後から、姿がなかった。
そして誰も男が女を刺したのを
見ていないようだった。



「ひい爺さんがよく言ってましてね。
自分の子孫が太陽フレアに影響されない
人工衛星を作り出すんだって」
「おめでとうございます。
これで地球は救われますよ」
「だといいですが」
取材を受けながら若き博士の表情が曇る。
「それをヨシとしない集団もいますよね」
「天から裁きがおりてくる、と叫んでるアレですね」
「噂では、かれらの中に天才がいて
タイムマシンを作り出したとか」
「そのようです」
ここだけの話ですが
と、取材記者が声をひそめてささやいた。
「すでに政府が手を打って、
タイムマシンで過去にむかったその天才に
刺客を差し向けたとのことですよ」
「そうですか・・でも
その天才を消してしまえば
タイムマシンも消える」
「地球を救うかタイムマシンをとるか、ですね」


今日も太陽が熱い。
ぐらぐらと煮えそうな頭を振って
僕は電車を待っていた。
世界は
何一つ変わっていないように見えた。
太陽を見上げる僕を除いて。

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