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ビー玉、あまいかしょっぱいか 

どうして夢ばっかり追いかけてる男が好きなんだろうね
ママは最後の最後でいつも泣きながらそうつぶやくんだ。
僕は泣いているママの頭を何度も撫でて
泣かないで、ママは強いでしょ
って、転んだときいつもママが僕に言ってくれるように言う。

ママはビー玉が好きで
僕と一緒におもちゃ屋に行くと、必ず小さなネットに詰まったガラスの玉を買う。
陽の光に透かして見たりテーブルの上に転がしてみたり
ビー玉を手にしている時のママの目には
キラキラと輝くビー玉がたくさん映っている。
「ママが生まれた町は港町でね」
うす緑色したビー玉を白く細い指でつまみながらママはささやく。
「こんなビー玉みたいなガラスの浮き玉が、いっぱい吊るしてあるの」
いつかそこに連れて行こうね、ママはそう言うんだけど
僕は港町にはまだ一度も行ったことはなかった。

僕は大人のことは詳しくはわからないけど
ときどきおばあちゃんがママに小言を言ってるのを聞いてしまうことがある。
「夢を追っかけるって言えば聞こえはいいけどね」
「家庭をもつことに責任をもてないってことなんじゃないのかね」
「子供や妻は、夢には邪魔ってことになるんじゃないのかい」
ママは黙っている。
そんなこと、わかってるわよ
帰り道、ママが独り言で言うのを、僕は聞いてしまったりする。

ママは性懲りも無くまた恋をしているみたいだった。
「今度はうまくいきそうなのよ」
嬉しそうに話すママ。

もう何回もそんなママを見てきたんだけど・・
「でね、今度の日曜日に遊園地で会うことになったの」



その日はとてもいい天気だった。
ママと僕は遊園地のベンチに並んで座って、人を待っていた。
ママはソフトクリームを買ってくれた。

風船を買ってくれた。
また、ソフトを買った。
お日様がどんどん真上に昇っていった。
震える指で、ママはバッグからビー玉を取り出した。
僕はベンチにビー玉を転がした。
太陽の光を受けて、一つ一つがまぶしく輝く。
ママが今まで流した涙の粒がビー玉になったのか
かなわなかった幾つもの夢がビー玉になったのか
ペンキの剥がれかかったベンチの上で
ビー玉は好き勝手に転がっていった。
いつの間にかママは電話をしに行ってしまって
僕はひとりでベンチに座っていた。


「綺麗だな」
頭の上で声がして、僕は空を見上げた。
「ビー玉なんて、見るの、久しぶりだなー」
細く長い足をポキポキと折り曲げるようにして
僕の隣に腰掛け、その男の人は人懐っこそうに笑った。
「おじさん、誰?」
「あー・・・魔法使いさ」
僕の冷たい反応に、苦笑いしながら
「ほら」 と、細くて綺麗な指から、100円玉を出してみせた。
「魔法使いじゃなくって、マジシャンでしょ?」
「うん、そうとも言う」
手品師は、いい天気だな、と額に手をかざして目を細めた。
「このビー玉、・・・食べられるんだぜ、知ってたか?」
「え?」
「ほら」
手品師は、ビー玉をひとつつまんで、クチに入れる素振りをした。
クチのなかで飴をなめているように舌先で頬をふくらませている。
「食べてみなよ」
「え」
「ほら、クチをあけてごらん」
僕もビー玉を食べるフリをしてみたくなって
言われた通りにクチをあけてみた。
手品師がビー玉をつまんで、僕のクチにいれるフリをして・・

え?
本当に、舌先に硬いものがあたった。
「ゆっくりなめるんだぞ。あわてて、呑み込むな」
手品師は、さっきクチにしたビー玉を、ガリガリと噛み砕いている。
僕は大きく目を開いたまま、ビー玉を舌先で転がした。
甘い。
本当の飴だ。

本当の魔法使いだ。

休憩おわりっ、向こうでショーやってるから見に来いよ
手品師はそう言って、片目をつぶって立ち上がり、行ってしまった。
やがてママがショボショボと戻ってきて
「だめ。電話に出ないの。逃げちゃったみたい・・・」
いつものように泣こうとしたので、僕は急いで
「ねえ、ママ。あっちで面白いことやってるようだよ、見に行こうよ!」
そう言って、散らばってるビー玉を集めてママに手渡した。



車の窓から海風が吹き込んでくる。

ママは助手席で髪の毛を押さえながら歓声をあげた。
ママは夢を追いかける男が好きなんだ。
無名だった手品師と、また簡単に恋におちて
でも、今度の結末は今までとは違ったみたいだよ。
ママよりも僕のほうが
人を見る目はあるのかもしれないね。
ねえ、ママ。


comment

一気に全部のお話読みました(^-^)

このお話が一番、私に近いかな(笑)

子供は見てるんです。
パパは本当にママを好きかな、とか、ママは本当に彼氏に大切にされてるかな、とか

子供は見抜くチカラがあるんです

この子がいるだけで、このママは幸せですね

どもども^^

ママのほうが子どもみたいなんだよね。
ママを守るこの子はどっちかっていうと
父親みたいな感じかな
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