> スポンサー広告

スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • --.--.-- --:-- 
  • コメント(-) |
  • トラックバック(-) |
  • URL |

> story

俺のマンバケ 2 

【マンバケ4日目~】

間違いだった。
俺は天を仰いだ。
満点の星が瞬いている。

急いで乗りこんだ飛行機。
わりと空いている機内で、女はすかさず俺の隣に座ってきた。
よく喋る女だ。
「私も北海道初めてなんですよ~」
「でもね、ずーっと計画してたんです」
「見たい所がいっぱいあって~」
・・・・・・
眠い。

いつの間にか眠っていたようだ。
目を覚ましたのは、着陸前に乗務員から
「倒した座席をお直しください」と言われたときだった。
あわてて、座席を元に戻す。
女は黙って、窓の外を見ている。
夕暮れが近いのか、西日が射し込みかけていた。
「着いてから、どうするんですか?」
目を覚ました俺に気がついて、女が訊いてきた。
「えーと」
俺は鞄のなかから、計画書を取り出す。
「これ、なんて読むんだ・・。ナカシベツ?」
「え?」
「ナカシベツ空港に着いたら、宿の車が迎えにきてるはずなんだ」
「ナカシベツ?」
「そう。なんとかベツだろ?」
「中標津だったんですか??」

すごく嫌な予感がした。
「この飛行機って、中標津空港行きなんだろ?」
女は申し訳なさそうに答えた。
「いいえ・・・なんとかベツはなんとかベツですけど」
「何ベツだよ」
「紋別空港行きです」

モンベツ~~~~???
どこだどこだ、モンベツってどこだ
俺は焦って立ち上がろうとした。
「お客様、まもなく着陸態勢にはいりますのでご着席ください」
そうだ。飛行機のなかだった・・・
急いで、北海道のガイドブックの頁をめくる。
あった。紋別。
「なんだ。わりと近いじゃないか」
「そうね。同じ太平洋側だし・・・」
女が無邪気に言った。
「東京~静岡くらいかな?」

admi01b.jpg


東京~静岡・・なんとかなるんじゃないか?
頭のなかで東海道新幹線がビュワーンと走る。
だが、もちろん、北海道に新幹線はないんだぜ、俺。
とにかく移動しないと。
飛行機が着陸して、俺は駆け出した。
空港の案内所に飛び込む。
「今日中に、中標津に行きたいんだが」
「中標津ですか?」
「そうだ。飛行機あるかい?」
案内の女性は申し訳なさそうに答えた。
「申し訳ございません。本日のフライトはもう終了いたしました」
「え・・・?」
「こちらでは、東京間、札幌間、それぞれ1便のみの運航になっております」
絶句。
飛行機での移動しか考えていなかった俺は言葉を失った。
「中標津に行くには、バスと列車を使うことになりますが」
「バスと列車ですか」
「はい。紋別にはJRが通っておりませんので」
「バスで」
「そうですね、遠軽までバスで行きまして」
「いきまして?」
「そこからJRに乗って網走まで」
「網走・・・」
「そこから標茶までいきまして、あとはバスになります」

「つまり、今日中には無理なんですか?」
「はい・・・」
申し訳ありません、と頭を下げる女性の前で
俺は泣きそうになっていた。
バイト初日でこの有様。
しかも見知らぬ土地でトラブル・・・・。
バスに乗るしかない。
俺はフラフラとバス停に向かった。

突然、背後でクラクションが鳴らされて
俺はとびあがった。
振り返ると、すぐ後ろに一台の車が止まっている。
運転席の窓があいて、手を振ってるのは、あの女だ。
「レンタカー借りたんです~」
おお!
「乗っていきますか?」
俺はなんて運の強い男なんだ。
助手席に座る俺に、女が話しかけた。
「中標津ですよね?」
「そうだけど。、いいのかい?」
「私はいきあたりバッタリの旅だから。かまわないわ」
「そうか・・助かったよ」
飛行機のなかでは悪魔に思えた女が、今は女神のようだ。
「そこに、地図がありますから」
ハンドルをきりながら、女が言った。
「道を見ててください。私、地図が読めない女、なんで」

俺も、実は地図が読めない男だった。

「こんな一本道で、なんで迷うんですか!」
女が車を止めて怒鳴る。
どうやら、携帯電話で宿に「遅れる」と連絡してたときに
分岐点を見損なったらしい。
目印になるような建物なんか、まわりには無い。
さんざん走り回って、結局どこにもたどり着けなかった。
女が外に出て、八つ当たりするようにドアを閉める。
静かな草原に、荒々しく響く音。
あたりはすっかり暗くなっていた。

バイト先に電話する。
「すみません、もうこの仕事ダメかもしれないです」
消え入りそうだ、俺の声。
「まだ始まったばかりですよ?」
「はい・・・」
「宿には、逐一連絡すれば大丈夫ですから」
「そうですか、あの」
「なんですか?」
担当の女性はあのときと変わらない口調だった。
動揺することはないのだろうか・・・
「レポートはどうしましょうか」
「そうですね~。スケジュール通りにいかないようですし」
「・・はい」
「毎日、メールで送るっていうのはどうですか」
なるほど。
そうすれば、途中で何かあっても、そのときまでの記録は残る。
「わかりました。じゃ早速、今日の分を送ります」
「お待ちしてます」

女はこちらに背を向けたまま
夜空をじっと見上げている。
俺も、外に出てみた。
見事な星空だ。
「すごいな」
「ね、すごく綺麗」
降り注ぐように満天の星。
「空にこんなに星があるなんて知らなかった」
「うん。見えてなかったのね」
バイトするのも、女についてきたのも、間違いだった。
だが、この星空は、悪くない。

「綺麗だけど・・見ててもお腹はいっぱいにならない」
女がボソっとつぶやいた。
後部座席に置いた大きな鞄から、お菓子の袋を取り出した。
「こんなのしかないけど。」
「ありがとう」
俺たちは、ふたりして黙ったまま、ポテトチップを食った。
何か会話しないと・・・気まずい。
「北海道には、絵でも描きに来たのかい?」
「え?どうして?」
「だって、ほら」俺は指差した。
「スケッチブックだろ?鞄の中にあるの」
「ああ」
女は悪戯っぽく笑った。
「違うわ。あれは、魔法の絨毯よ」

その言葉の意味は、次の日にわかった。

つづく

comment

爆)>東京~静岡くらい
北海道の広さを甘く見てはいけませんよね。
以前女満別空港に降りたかったのに釧路空港
に降りたことがあります。^^;

広さの感覚が違いますよね。
女満別空港と釧路空港っていうのも・・・
そのときはどーしたんですか?

そのときは台風がきていて女満別の降りれなかったんです。
急遽釧路の駅前でホテルをとって急場をしのぎました。^^;

悪天候で違う空港といっても
北海道の場合、遠すぎますから・・・
函館空港が吹雪でダメで、千歳に、と言われたときはどーしよ~~と思いました。
結局、羽田に戻ったのですが、そのほうが良いですね。ホント。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。