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俺のマンバケ 

「キミ、休んでいいよ」
「!」
「明日から、1ヶ月の休暇だからね」
「え」
「心配すんな。 戻ってきても、そのままだから」
「い、いきなり明日からですか」
「ずっと前に通達は出してたはずだが」
「デスクの引き出しに入れたままなんじゃないですか?」
「・・・・・」

確かにその旨書かれた書類は渡されていた。
引き出し開けたら、奥に突っ込まれてクシャクシャになっていた。
うちの会社、ちょっと変わってるよな?
マンスリー・バケーション、略してマンバケ。
強制的に1ヶ月休ませるって・・・
いや、そりゃ休みたい奴もいるよ。
だが、俺は。

俺にはこれといって趣味も何も無い。
両親はとうに亡くなって、実家はもう処分してしまって
里帰りでゆっくり、なんてこともできやしない。
彼女とデート、相手がいない。
旨いものに興味はない。 観たい映画もさしてない。
仕事しか、することないってのに
1ヶ月、どーしろって言うんだ???

【マンバケ1日目】

「バイトしかない」
布団のなかでブチブチ考えていたが、どうやら案がまとまった。
規定違反になるだろうけど、バレないようにすればいいだろ・・
1ヶ月だけのバイト。
俺はとびおきて、部屋の隅に山積みになってる古新聞のチラシを漁りはじめた。
求人広告を、丹念に見ていく。
期間限定で条件に合う仕事は、なかなか見つからない。
あ~あ、やっぱり急な思いつきじゃダメだよな。
諦めて、今朝の新聞を読もうとして、、手を止めた。
小さな黄色いチラシに、「急募」の太字。

期間限定、1ヶ月だけのお仕事です
誰にでもできる簡単な作業です
電話連絡後、面接にて詳細相談
秘密は厳守いたします


秘密厳守・・・今の俺にはピッタリじゃないか?
仕事の内容や給料のことは一切書かれていなかったが
とりあえず、電話することにした。


「はい、ドリーム・トラベルでございます」
明るい声の女性が出た。
「あの・・求人広告のチラシを見たのですが」
「はい、お電話ありがとうございます。
早速ですが、面接のお時間を決めさせていただいてよろしいでしょうか」
「あ、はい」
「では、明日の13時に、当社でお待ちしています。お名前と連絡先をお願いいたします」
会社の地図はチラシに書かれていた。
ドリーム・トラベル・・・いったい、どんな会社なんだろう。
面接の約束はしたものの、不安になってきた。


【マンバケ2日目】

不安にはなったが、俺にはやっぱり、こうするしかない。
1ヶ月間、「何もすることねーよ!」と叫んでいる自分の姿が思い浮かぶのだ。
チラシに書かれてあった地図の通りにやってきて俺は立ち止まった。
思わず、息を呑む。
目の前にデカいビルが建っていた。
ドリーム・トラベルって、あんまり聞かない名前だが
実はその業界じゃかなり名の知れた会社なんじゃないか?
不安だったのが嘘のように、俺の心のなかに期待感が湧き起こってきた。
受付嬢に面接のことを話すと、人事課のフロアはこちらです、と案内された。
フカフカの絨毯に少し足をとられながら面接室のドアを叩く。
「はい、どうぞ」
女性の声がして、俺はドアを開けた。


簡単な質問のあと、面接官が言った。
「あなたの仕事は、旅行のモニターです」
「モニターですか?」
「はい。当社の商品のパック旅行に行き、感想をレポートしてもらうことなんです」
「旅行代金は?」
「もちろん、当社の負担です」
ニッコリと、彼女は笑った。
「バイト代もいただいてですか?」
「それはもちろん、お仕事ですから」
なんだかずいぶん、都合の良い話じゃないか?
うまい話にはウラがあるもんだ・・・。
「あの」
「はい?」
「旅行もできてバイト代も入って、いい仕事ですね」
「そうですね。最初は皆さんそうおっしゃいますが」
「どこか大変なところが?」
「旅行といっても、自分の行きたい所にいけるわけではありませんし」
「ああ、そうですね」
「1ヶ月にいくつかまわってもらうので、体力的にもキツイかと」
「なるほど」
思ったより、楽ではなさそうだが・・
「そういえば、秘密厳守と書いてましたが」
「ああ」
彼女は微笑みながら、俺をじっと見つめた。
「仕事がモニターですので、旅行先でのことはほかに漏らさないでほしいのです」
「それはそうですね」
「その代わり、あなたのことも細かい事は関知しませんので」
携帯電話さえつながっていればよろしいのです、
彼女は俺の目を覗き込んだ。
俺は、このバイトをすることになった。

【マンバケ3日目】

今日から旅に出る。
必要なものは一式入っていると渡された黒い鞄を抱えて
俺は空港に向かっていた。
パック旅行の代金は会社負担だが、そのほかの費用は
報告書を提出した後、清算することになっている。
「領収書を忘れないようにね」
最後にそう言って、面接官は俺を送り出した。

黒い鞄に入っていた計画書によると
最初の目的地は北海道になっていた。
いきなり北海道かよ!
自慢じゃないが、俺は京都へ修学旅行で行った以外、
遠くへ旅行をしたことがない。
北海道のイメージは、寒い、遠い、広い、熊と蟹、・・・・
なんてお寒いイメージだ。
空港の売店で旅行のガイドブックでも買うか。
もちろん、領収書はもらう。

「あの、北海道に行かれるのですか?」

声のするほうを振り返ると
会った事のない女だ。
「あ、あの、それ」
女は俺が手にしたガイドブックを指差している。
「北海道の本、ですよね?」
「そうですけど」
「わ、私も北海道に行くんですっ」
「そ、そうですか」
「はい。憧れの北海道なんです~~」
なんなんだ?この女。
女は、レジを通った俺の後をついてくる。
「北海道のどちらにいかれるんですか?」
「たぶん、札幌じゃないかな」
「そうなんですか。私は・・・」
俺は歩幅を広くした。
女との間隔があいて、人ごみにまぎれる事ができた。

札幌じゃないかな、とは答えたが
実は自分でもよくわかっていないのだ。
飛行機の切符には、聞いた事のないような地名が書かれている。
俺は、いったい、どこに行くんだろう。
待合室で、必死にガイドブックを読む。
鞄のなかには、「北海道秘湯の旅」3泊4日のチケットが入っていた。
「あ、またお会いしましたね!」
その声に顔を上げると、売店で出会ったあの女だ。
「そ、そのようですね」
「よかった~~。私、ひとり旅なんですよー」
「・・・・」
「ちょっと心細かったんです。少しお話して良いですか?」
心細いって、見知らぬ男に声をかけるような女が言う事か?
だが、心細いのは俺も同じだ・・・
「あ!」
突然、女が立ち上がった。
「い、今、搭乗の案内が聞こえませんでしたか?」
「え?」
「なんとかベツって、言ってましたよね!」
「なんとかベツ??」
確か俺も、なんとかベツってところに行くことになっていた。
北海道の地名って、なんでこうも覚えるのが難しいんだ。
「お、俺もいかなくちゃ」
「え?札幌じゃないんですか?」
「ああ。札幌じゃなかったみたいです」
「じゃ急がないと!最終の案内って言ってましたよ」
女が走り出した。
俺もあわてて後を追う。
この女についていったのが、そもそもの間違いだったんだ。

つづく


comment

続きが読めてとても嬉しいです。
ありがとう!^^

いえいえ、こちらこそ~
いつ終わるかまったくわからない物語になってます・・・
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