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短劇  

何をしたくもない。
食べて寝るだけで一日が終わる。
母親は黙って食事を置いて、汚れ物を片付ける。
自分がこの世からいなくなっても
世間も歴史も何ひとつ変わらないだろうと思う。

悪魔 「じゃあ、その命をよこせ」
わたし「この命がなぜほしい?」
悪魔 「命がほしいのではない」
わたし「では何が?」
悪魔 「お前が生きていくことで何かが生まれてしまうことがイヤなのだ」
わたし「今まで、何も生まれてこなかった」
悪魔 「そうだ」
わたし「これからだって、そうじゃないか」
悪魔 「それはわからない」
わたし「わからないって?悪魔のくせに」
悪魔 「運命は結果が決まっているだけだ」
わたし「結果?」
悪魔 「その結果にどんな過程があるかは曖昧だ」
わたし「おおまかな結果だけが決まっているってことか?」
悪魔 「そうだ。おまえが生まれ、死ぬということだけがハッキリ決まっている」
わたし「どう生まれ、どう生きて、なぜ死ぬかはどうでもいい、と?」
悪魔 「そうだ。歴史というものはひとつの見方でしかない」
わたし「結果だけがハッキリとしているのが歴史だということか」
悪魔 「どうしてそういう結果になったか、それはどうだっていいことなのだ」
わたし「目に見えぬものの積み重ねも、偶然であれ必然であれ、いずれわかっている結果のプロセスのひとつにすぎないと」
悪魔 「運命ではない」
わたし「とすると、今、この命をおまえに渡すと、どうなる?」
悪魔 「どうもならんさ」
わたし「そうだよな。何も生まれてはいない」
悪魔 「お前が今いなくなっても、事実は何も変わらないのだ」
わたし「生きていないと同じだものな」
悪魔 「そうだ。生きていないのと同じだ」
わたし「・・・わかった。おまえにこの命を」
悪魔 「よこせ」

突然に明るい光が満ちる。
悪魔 「またお前か!邪魔をするな!今度はなんだというのだ!」
光  「悪さはおやめ、この人の命は奪えない」
悪魔 「なぜだ。こいつは生きていないようなものじゃないか」
光  「お前は言ったではないか。運命は結果だと」
悪魔 「こいつは結果として生まれてこなかったってことだ」
光  「私はこの人の母。母がこの世に生み出したものという結果はどうなるのだ」
悪魔 「・・・・・」
光  「歴史は変えられない。過程がどうであろうと、結果は変えられないのだから」
悪魔 「そうだな。生きていないようなものとはいえ、こいつは生み出されたもの」
光  「人として生まれでたものは、人として生きることになる」
悪魔 「それが結果であり、運命だ」

悪魔と光は消える。
ぼんやりと考える。

わたし「人として生まれでたものは、人として生きる」

自分が何も生み出せなくても、自分が生きることで、誰かの存在意義になるのか。
母親がドアをノックする。
いつもは返事だけする自分が、ドアを開けたので
両手にお盆を持った母親が、目を丸くした。


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