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僕を呼ぶ声 


お題 「僕をよんだのは、誰?」





駅のなかを通り過ぎようとして、声を聞いた。
それは確かに自分を呼ぶ声。
思わず立ち止まった僕の肩にぶつかりながら
後ろから人が流れてゆく。
振り返り気味に横目で迷惑そうににらみつけながら。

笑い、ささやき、携帯で話し、足元にものを落とし
そんな音の渦のなかで
確かに自分を呼ぶ声を聞いた
と、思った。

いそいで今歩いてきた道を戻った。
朝出かけるときに
黙ったままドアを閉めてきたことを悔いながら。

彼女の声だと感じたことに根拠なんか、ない。
だけど
きっと彼女の声だと思った。
僕を呼ぶのは
彼女しかいない。

昨日の夜に些細なことでケンカして
今朝はふたりとも無言だった。
彼女は僕に背を向けて化粧をしている。
言葉がないって、どうしてこうも重いのだろう。
風船のなかにどんどん息が吹き込まれていくように
部屋のなかには 「何か」を探している空気がみちてゆく。
ひとこと、何か言葉があれば それは弾けてしまうだろうに。
僕は、黙ったまま
靴を履き、ドアを閉めた。

途中から、走った。
朝閉めたままのドアの前に立ち
急いで開けながら 彼女の名前を呼んだ。
部屋のなかはガランとして
誰もいなかった。
携帯電話が鳴る。

「もしもし」
向こうから、僕の名前を呼ぶ声が聞こえる。
会社の同僚だ。
「聞こえてる?大丈夫?」
大丈夫です、そう言おうとして携帯電話が汚れているのに気がついた。
「ニュース見て、驚いたよ。あの電車に乗ってた?怪我してない?」
怪我?


僕は今朝、何も言わずにドアを閉めた。
彼女の声が聞こえる。
何度も何度も繰り返し、僕の名前を呼んでいる。
だけど僕は もうそれに答えられそうにない。
いつものように彼女に話しかけて笑顔でドアを閉められたら

彼女の声にこたえたい。

たった 一言だけで いい。

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