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おくりもの 

ボクが昼寝から目を覚ますと
みちさんは「すいぶん寝ていたね」と言って
おいしいミルクをくれた。

ボクはみちさんの家の庭に
昨日、置いていかれたんだって。

みちさんはボクをみつけて
ちょっと困った顔をした。
みちさんはずっと、ひとりで暮らしていて
仕事に出かけていくと家には
誰もいなくなってしまうから。

みちさんが困っていると
となりの家から
ボクの声を聞いて
男の子が顔を出した。
「あ!かわいい!」
男の子はうれしそうにボクに近寄ってきて
やさしく抱き上げてくれた。
「おねえさんが仕事でいない間、お世話してもいい?」
みちさんは目を丸くしてうなずいた。「もちろん、いいわよ」
男の子のお母さんがニコニコしながらこっちを見ている。
みちさんは、お母さんに、おじぎをした。

ボクはみちさんとお散歩をするのが大好きだ。
みちさんは、ボクが来るまで
あんまりお散歩はしてなかったみたい。
「ねえ、ふしぎだね」
みちさんは、歩きながらボクに話しかける。
「前は話しかけてこなかった人が
今は、こんにちは、って笑いかけてくれる。
キミと一緒にいるだけなんだけど」
ボクはみちさんを見上げる。
みちさんは、ふふふって、幸せそうにボクを見て、ほほえんだ。

ある夜、ボクは熱を出した。
みちさんはあわてていろんな病院に電話して
ボクを連れて行ってくれた。
夜遅かったけど
お医者さんはとても親切だった。
「この子はどうしたんですか?」
「家の庭に置いていかれた子なんです」
「そうなんですか・・・あなたがお世話してるんですね」
「はい。ご近所のかたに手伝ってもらっています」
お医者さんはみちさんにやさしく言った。
「また明日、様子を見せてください」
「ありがとうございます」

みちさんは、ボクが来るまで
ずっとひとりぼっちだったんだって。
でも今は違うよ、って
いつもおいしいミルクをくれるたびに
ボクに笑いかける。
ボクもみちさんと会えてうれしかったよ。

次の日、ボクの様子を見て
みちさんの顔色がまっさおになった。
かけこんだ病院のお医者さんの顔も昨日とは違う。
ボクは一度だけ、「みちさん」ってよんで
そして目を閉じた。

みちさんがボクを抱いていると
となりの男の子が泣き出した。
お母さんも目を真っ赤にしている。
みちさんはやさしい人たちに囲まれていた。

そして、みちさんはボクの背中に
白い小さな羽をみつけた。
羽にさわろうとしたみちさんの手に
ふわりと冷たいものが降りかかる。
雪だ。
みちさんは、空を見上げた。


今日はクリスマスだったね
男の子が涙をふいて言った。
みちさんは天使のボクを抱きしめながらつぶやいた。

ありがとう、おくりものをありがとう
そして
ずっとわすれないよ
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おじさんの木 

12月になってある寒い朝。
前の日に降った雪をスコップで除けていると
隣のおじさんが目を丸くして走ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっと!!」
店先にいた私と母をつかまえて尋常な様子じゃない。
「どうしたの?おじさん」
「こ、こ、こ、これ見てくれよ!」
被っていた毛糸の帽子をサっととると
おじさんの綺麗な禿げ頭を差し出す。
私達は息を呑んだ。
だって、おじさんの頭のてっぺんに
小さな緑色の芽が生えていたのだから。

おじさんの頭の芽はその日のうちに大きな話題になり
テレビ局やら新聞社やら学者さんやらお医者さんやら
さまざまな人たちがやってきて
それはそれは大騒ぎになった。
「こういうの見たことあります?」
「無いですね」
「お花屋さんでもそうなんでしょうね」
「いつもお店では見てますけど、人の頭の上では初めてです」
当たり前のことを何度も質問されて
私も母もだいぶ疲れてきた。
私たち以上に、おじさん本人が疲れてきていた。
燦々とお日様の光があふれる店先のウッドデッキで
おじさんがうとうと居眠りを始めると
パコン、と音がするように
芽の先がふたつに割れて双葉になり
ニョキニョキニョキっと頭の上で芽が育ち始めた!
テレビ局やら新聞社やら学者さんやらお医者さんやら
大勢の人が見守る中
こっくりこっくり眠るおじさんの頭の上で
芽はどんどん大きくなっていった。

【今日のおじさんの木】
テレビ局はおじさんと契約を交わして
毎朝おじさんの頭の上の様子を朝の番組でレポートするようになった。
芽は大きくなり
どうやら何かの木になるようだったので
タイトルは、こんな感じ。
木は、ずんずん大きく太くなってゆく。
「おじさん、どんな感じですか」
「どうもこうも頭が重くて肩が凝るよ」
「だいぶ成長しましたね~」
芽が生えてから1週間。
私も母も、それがなんの木なのか気がついていた。

そして、その日がきた。
頭の上で小ぶりながらも立派に育ったモミの木。
おじさんは重さで少しうなだれてはいたけど
頭の上の木にクリスマスの飾りつけをされて、嬉しそうだった。
「懐かしいねえ。子供達が小さかったころは
毎年こんな風にツリーを飾ったもんだよ」
シャンパンをふるまわれて
おじさんは気持ちよく居眠りを始めた。
ひざ掛けをかけようと近づいた私は
おじさんの頭の上で何かが動くのを見つけた。
モミの木の枝のなかに
素早く隠れたそれは
小さな赤い服を着たサンタだった!
サンタはクチに指をあて
「静かにね」、とウインクした。
ウ、ウンとうなずく私。
そのとき、遠くからシャンシャンシャンシャン、、、と
鈴の音が。

音はだんだん近くなってきて
そして、店の前でとまった。
あわてて店のドアを開けて見ると
大きな車から何人もの子供たちが飛び出してきて
「おじいちゃんはどこ?」
「おじいちゃん!木を見せて!」
運転席から、隣の息子さんが出てきた。
「やあ。お久しぶりです。
すっかり父がお世話になってしまって」
まあまあ、立派になって、と母が懐かしそうに招き入れる。
鈴の音かと思ったのは
タイヤに巻かれたチェーンの音だったんだわ
じゃあ、あのサンタは?

数年ぶりに孫達に囲まれて
おじさんはますます嬉しそうにしている。
そっと頭の上の木を覗いてみると
枝の陰に、小さなサンタの人形が飾られていた。


おじさんに温かな日々が続きますように。

メリークリスマス

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恋文 

俺らは毎日走る練習をしていた。
いかに彼女のもとへ早く正確に手紙を届けるか。
それが俺らの使命なんだ。

もっと足を上げて!
目標を見失っちゃだめだ!
賢くコースを選べ!
スピードも大事だが障害を乗り越える力強さも備えろ!
そして最後は気力だ!

時間が経つごとに
俺らの目の色が変わってくる。
うようよしてるこいつらの中で
彼女に手紙を届ける事ができるのは
たったひとりだ。
それは自分だ、呪文のようにつぶやいてイメトレを続ける。

俺らは出発のときがくるまで
丁寧に手紙を書く。
それぞれ少しずつ内容が違っている。
届けることができた手紙だけが
彼女に読まれ
そして彼女の記憶に刻まれる。
記憶のなかで俺らは生き続ける。
永遠の命がそこから始まるんだ。


そして出発は唐突だったりする。
彼女のもとへいけるのか。
ときには間違いだってこともあるぜ
隣で誰かがつぶやいた。
無駄死にだけはしたくない。
飛び出した俺らは正しい出発だったことを一瞬で知る。
よし!
どうぉぉぉぉぉ!!
荒波のように俺らは走る。

しっかり学習してないやつらはコースを間違えてしまう。
馬鹿だな。
だが馬鹿なヤツの手紙は彼女には必要ない。
障害の少ないコースを
俺らは体力の続く限り走る。
長い。
遠い。果てしない。
どこまでも暗闇のなかを
懐で手紙を温めながら
俺らは少しずつ彼女のもとへ近づいてゆく。

「ここだ。」
ようやくたどり着いた地に
彼女はいなかった。
どこを探しても、いない。
もう去ってしまったのか。
それとも、これから来てくれるのか。
俺らはもうずいぶん減ってしまっている。
そして皆今にも息絶えそうに疲労困憊していた。
「待つしかないな・・・・」

俺は自分の書いた手紙を読み返してみる。
君と愛し合えたなら
俺の命を君に託そう。
俺のすべては君への贈り物だ。
A、T、G、C・・・・・

いつまで待つのか。
残り少なくなった俺らが次々に消えてゆく。
最後は気力だ!
練習のときに何度も言われたな。
知力、体力、気力が試されていくわけだ。
だが俺も、もうだめかもしれん・・・・
俺も消えてゆく。
そう思った瞬間、遠くに光が見えた。

光臨、
まさにその言葉どおり
彼女は光とともに降りてきた。
あたたかい。
命が満ち溢れている。
残った俺らは最期のチカラで
彼女の足元ににじり寄る。
彼女の差し出された手に
手紙を渡そうと。

一番早く手元に届いた手紙だけを
微笑みながら受け取って
彼女は俺にキスをする。
その瞬間、俺らはすべて消える。
俺の命だけは
彼女への手紙になって残された。

君と愛し合えたなら
俺の命を君に託そう。
俺のすべては君への贈り物だ。
A、T、G、C・・・・・




「おめでとうございます。妊娠していますよ」

恋文はしっかりと届けられた。っす。

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プロポーズ大作戦 

たぶん夢だと思ったから
怖いとか感じなかった。
「なんですか?これ」
自分でもわりと冷静な声で質問してたし。
「これか?これは・・・」
意外にあっさり手元のカードを裏返して見せながら
「これは写真だ」

数枚の写真。
しかも男の写真。
イケメン風な顔もあれば
いかにも三枚目という顔もありの

どういう基準ですか、これ?
そう言って見上げると
「べつに。根拠も基準もないけど」
相変わらずおごそかな声。

う~~ん、この中から選べと言われたら・・・
私は一枚の写真を指差した。
「これかなあ」
「ほうほう。この男ですな」
言うとすぐに
さくさくとカードをしまいこんで
月明かりのなかに消えてしまった。
やっぱり、夢だったんだ。



「さあ、ここから好きなのを選びなさい」
え?
ようやくウトウトしかけたのに
誰だよ起こそうとするヤツは・・・
無視して寝ようとすると
「ほれ。起きろ。選ぶのだ」
パタパタとカードで俺の頭を叩く。
「ぬあんだよ!」
起き上ると、鼻先に数枚の写真を差し出された。

女ばかりだ。
綺麗な顔もあれば
三日見れば慣れる風な顔もあり
女の顔もいろいろだ。
俺ってどんな女がタイプだったっけなあ
とつぶやくと
「こんなんじゃない?」
参考までに、と指差される。
よく見ると、確かに好み。
「ああ、そうだ。この人」
だな。

俺はその一枚を引いた。
「そかそか。その女だな」
そう言うと、パっと手の中の写真を取って
あっという間に
月明かりのなかに消えていった。


「あの。傘忘れてますよ」
梅雨の一日
出掛けに持ち出した傘を
うっかり電車の中に忘れるところだった。
「すみません。ありがとうございます」
振り返って声の主を見て
あ、と小さく叫んだ。
向こうも同じように目を丸くしている。

夢だけど
夢じゃなかった。





「よっしゃ、あと4組作らないと」
「パーフェクト狙ってるの?」
「うん」
相思相愛のカップルを作って出会わせて・・・・
天使の仕事は結構難しい。
5組全部がカップルになれば
ハートマークが点灯して景品もらえるんだ。
って
こんな企画
どこかのテレビ番組が確か真似してたな。
そんなこと気にしてられないや
5番目のカップルはやっぱ、面白くないとダメですよね?神様

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101 

窓を開けると
夜風が吹き込んできた。

神様ありがとう
ボクは天を仰いで満月に感謝した。

ボクには100人の友人がいて
今夜、誕生パーティーを開いてくれた。
100回のおめでとうを聞き
100の握手を交わし
100のキスと抱擁をうけた。

「みんなで相談したんだ。それで、この贈り物に決めた」
彼が静かに言いながら、ボクにこれを
そっと差し出した。
白いリボン。
真っ青な箱。
ありがとう
ボクはひとつの贈り物に
100回、お礼の言葉を言った。

箱を開けてごらん、
天上の月がボクに語りかける。
「開けてもいいの?」
もちろんさ
月は穏やかに微笑む。
ボクはゆっくりと白いリボンを解いた。
リボンは綺麗な螺旋を描いて
風に吹かれ落ちてゆく。
いくつかの 読まれなかった暗号が
リボンからこぼれて夜空にのぼっていった。

青い箱はどこにも切れ目がないようで
ぐるぐると回しながら手がかりを探す。
どうやって開けようかと考えていると

暗証番号は?
月が促す。
そうだ。暗証番号だった。
ボクは小さくガッツポーズ。
箱の隅に、カウンターのようなものを発見した。

何桁もある番号を、ボクはスラスラと打ち込んでゆく。
打ち込みながら、なんでこの番号を知っているんだろう
と、ちょっと不思議に思う。
カチリ、
と小さな音がして
箱が少し震えた。
思わず空を見上げると
月が言った。
「開いたね」
厳かな声だった。

ボクはゆっくりと箱を開く。

そこから光があふれ出して
ボクを包み込んでゆく。


「さあ。目をあけて」
月の声が聞こえる。
だけどそれは天上からじゃない
もっと近く
耳元でささやくように。
まぶしい月光に顔をしかめながら
静かにボクは目を開けた。

いや、月の光じゃない。
ボクは周りを確かめる。
数人の白衣を着た人がボクを見つめている。
そして天井には
丸い、月のような手術灯。


「ようこそ。気分はどうだ?」
顔を覗き込まれた。
ボクはかすれた声で返事する。
「良くも悪くもないよ」
ボクの答えにひとりの医師が笑う。
「まったく。第一声まで皆同じなんだな」

君はクローンだ。
君のオリジナルはもうこの世にはいない。
君たちは生前に登録された細胞からうまれた。
コピーを繰り返すと不具合が起きるから
君たちには、オリジナルの細胞が必ずひとつ
使われているんだよ。


部屋の周囲にボクにそっくりなボクたちが佇んでいた。
100人のボクに囲まれている。
そう、クローンは100体。
ボクは101体目。
静かに起き上がり
音も立てずに歩いて

ボクはボクの体をボクたちのなかに埋める。

やあ、ようこそ
100のささやきのなか
ボクはたぶん100回繰り返された言葉を口にした。

これが
命 というものなのか。
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